画像の説明
ぱー
waimai
RisuPon
ぽ
メイ
あやちゃん

白く透き通り粘り気のある女のゲロ

十二指腸の上下を切断し、摘出された。血は出ていない。
金属製の医療道具によって、つまみ、持ち上げられる。
それを、予め熱し、胡麻油の敷かれたフライパンに乗せると、水分によって生じる破裂音を凄まじく立てながら、消化液の、不快で鋭利な匂いを空間に充満させた。
フライパン上の十二指腸は、25センチもあった艶やかな様とはかけ離れた姿に変わり、そこに収まっていた消化液は、熱せられることで、粘土を残したまま透明になっていた。
おぼろげな視界には、ハロゲンヒーターに似た重たいオレンジが、青い空間に浸透し始めていた。

乱雑にカットを繋げる様に、情報の更新が再開され、対象を得る。
筋肉は少し硬直してはいたものの、すぐに本来の意識されない感触を取り戻し始めている。
柔らかい容器の中には、高い硬度と大きな質量を抱えた物体が収められたままである。
煤で汚れたクリーム色の長い廊下を抜けて、受付で会計を済ませ、街へ出た。
ポケットに入れていたカシオの腕時計は、午後四時手前を示しており、男は年末の時間と光の印象を再確認する。
すれ違った老人が身につけている、ダウンジャケットのちぢれた線が描く幾何学模様を気にしながら、男は東京郊外の新興住宅地を歩く。
男には目的があるが、その具体的な内容を思い出せず、乱雑に散髪した後に好き勝手に伸びた前髪を掻き上げた。

新しく鋪装されたコンクリートには、早くも降り注ぐ膿と愛液、甲虫の内臓によって、砂糖の様に白く煤けた膜に覆われている。
決して新鮮ではない街の有様を眺めて歩けば、我が家が目に入る。
右手で鍵を差し込み捻ると、鍵が閉まる。予め扉は開いていたのである。
寝起きの様な重さを引きづる男の体に、小さな切り傷から血液が浸透する様に硬直する。
鍵を捻り直し、引き抜き、左手でドアノブを回転させる。ドアの奥は永遠のように暗いのだが、そこに鋭く、夕刻の光が明確な輪郭を持って差し込んだ。
その光は、男の伽藍堂な部屋の中に、かつて存在していなかった、決して華奢とは言えない、ふやけた足の存在を露わにした。
耳障りな開閉音により、部屋の空間は薄暗い印象を残したまま、形状を可視化する。

女が居る。

路上で夜を越すルンペンにも似た姿勢で、白目をむき、口を開けた全裸の女が、部屋の薄い壁にもたれかかって居る。
女の周囲の床は水浸しになっていた。
これから動こうとする気配を寸分も感じさせぬその姿から、男は安心して、部屋の奥へ向かう。
女の口からは、粘性のある透明な液体が流れ出している。
乾き、血管の露出した歯茎から、健康そうな白い歯を見せ、液体を、静かに肉体を伝わせ部屋に注ぐ。
床に広がる液体に人差し指で触れ、親指とともに弄ぶ。
その液体は、男の十二指腸から抽出されたものと酷似していた。
人差し指を口に運び、口を閉じて舐める。
わずかな酸味を持ってして、米の様な甘さだった。
それ以上の何もない。
何よりも、ただ時間は経過し、生活を再開しなければいけないことに、男は困り果てた。
生活に興味のない私は、悪戯に文字を打つことを止める。
三日同じ位置に止まっていた、赤児の手のひらほどの茶色い蛾が、今日は姿を消していた。