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ぱー
waimai
RisuPon
ぽ
メイ
あやちゃん

ふちの続く先

拝啓、宇宙の果てのだれかへ

こちらはあたたかい日が続いていますが、そちらはどうですか。

親指のゴールデンレコードと名乗っておきながら、いつもパソコンで両手打ちしてごめんなさい。今、はじめてスマホのフリックで文章を打っています。東京都の隅っこにある喫茶店からお届けしますが、無事にそこまで届くでしょうか。届かなくても全然構わないのですが。飲んでるブレンドコーヒーが美味しいです。美味しいコーヒーは、液体のふちがグラデーションになって透明に続いているような気がするのですが、気のせいかな。

春の恋の曲ばかり聴いている。甘い声、甘い歌詞、甘いメロディーラインに耳が歯周病になるかもしれない。延々と登場する「あなた」「きみ」「運命」「愛」、とかそういうのに、ぜんぶ同じものを当てはめて泣いている。人間ではなくて、ものですが。ものというか、状態なんだ。辞書で引けばちゃんと出てくる言葉に、ずっと前から。耳がそろそろキツい、塩辛い音楽が聞きたい、けれども聞くのをやめられないのは、怒っているからかもしれない。いえ、そんなに怒ってもないのかな。自分の怒りの感情に自信がない。

中指を立てられなくなったのはいつから。 悲しみの底から這い出る為に、怒りを生成していた力がなくなったのはいつから。怒ってると言いながら、そんなに怒ってはいないんだ、本当は。ぜんぶ許しちゃうよ、二晩寝たら忘れるから。慎重に調合して出来た人工的な怒りの披露しか今は。ほんと情けないんだけど、布団から起き上がるのもつらいんだ、今は。何を言われても、何をされても奪われても、ただ悲しくて涙が2日ぐらい流れるだけで、怒りには成長しなくて、泣き疲れて眠る赤子みたいになってしまった。中指を立てる筋肉がなくなった代わりに、布団に深く潜ることが上手くなった。

それで薄ピンクの風吹いてるだろ絶対みたいなj-popを聞いている。健全な人の顔を一瞬でしかめさせられる、暗く湿った曲をガンガンに聞けたらいいのに。反して耳の中は、美しい世界である。窓の白いカーテンが春の光に控えめに揺れていて、君がいる。君が好きだ。恋しい。永遠だって言ってくれ。そうして帰りの自転車を漕ぎながら声を上げて号泣する。

私は天才ではない。お師匠にも言われたし、自分でもそう思う。そしてこの世界は、自分だけは何とかなると思って飛び込んで何とかならない人で成り立っている、らしい。私もその一員だ。人には向いてる立ち位置があって、うん、いいね、その立ち位置が似合うよ。

好きだからやってんだろうが。無人島に行っても、私はきっと今と同じことをする。その状態が好きだから。ペンと紙さえあればいい。有名になりたいわけじゃない。ただ自分の好きな状態にいたい、それじゃだめなんだろうか。怒ってない、ほんとに怒ってないよ、むしろ恋の歌を聴いて悲しみを助長させて発散してるんだ。怒ってない、私はずっと怒れない。怒りたい。悲しみのふちは怒りじゃなくて、透明に続いている。これも全部きれいに蒸発してしまう。青いイヤホンを耳からぶら下げて、うつむいて街をガシガシ歩いて、甘い声と君、君への恋心にこれを重ねて、何度も反芻して、飽きずに目から水を流して、やめないで、私、忘れないで。目が腫れてずっと熱い。生きているからまだ何もかも間に合う。そうだろう。敬具

 

 

鮃 0313