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ぱー
waimai
RisuPon
ぽ
メイ
あやちゃん

天災とは戦えない

恋をした時、どうしてそれが恋だとわかるのだろう。

 

ゼミ新歓の二次会に、ひとり遅れて参加した。21時30分。
私がその中華料理屋に到着した頃には、みんなすでにほろ酔っていて、空いたジョッキがテーブルを埋めていた。賑やかな雰囲気。端っこに座ってビールを一つたのんだ。離れた席に教授や助手さんを見つけて、少し緊張する。

手元にビールが届いたタイミングで、隣の先輩に「彼氏はいるのか」と訊ねられる。目がマジだ。どうやら今まで恋の話で盛り上がっていたらしかった。

そこで改めて恋バナは人類の共通の話題だったということを思い出す。恋バナは誰も傷つけないし、楽しいし、誰もが知ってるし、雰囲気を軽くするし、「言う言わない」の駆け引きがあって、本当に話題として優秀である。

恋は天災だ。天災とは戦えない。計画が適用されないし、実態がなくてわからない。クックパッドで「彼氏 作り方」と検索をかけて眠れない夜もあれば、死んでも恋人は要らないと決心する夜がある。意図的に誰かを好きになろうと努力した次の日、恋愛の「レ」の字をどこかに落としてきたみたいに、何かに没頭していたりする。そして思ってもみなかったタイミングで、電光石火の恋に落ちるのだ。大変怖い。ほぼ自然災害だ。恋をすると、眠りが深すぎるほど深くなる。喉が乾燥して、水をよく飲むようになる。ぼんやりする。ぼんやりすると手が止まるので何も考えないようにする。まっしろな脳内にくっきりと、「絶対に目隠しプリン当てをしたい」と、具体的なデートプランが浮かぶことさえある。

二次会は24時を回った頃にお開きになった。

最近恋人ができたという隣の先輩はとても幸せそうに見えた。どうして人は恋をするんだろう。そして恋をした時、どうしてそれが恋だとわかるのだろう。
イヤホンで耳をふさいで、夜道を自転車で走って帰った。

 

2018.10.05 鮃

 

p.s.
この、「恋をした時、どうしてそれが恋だとわかるのだろう。」のフレーズが自分のものではない気がして検索する。やっぱり。正しくは、三浦しをんさんの「君はポラリス」という小説の「どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう」という一文。違うふうに覚えていたみたい。

 

p.s.
ここのページをこっそり育てることにする(気づく人なんているのか?)

私が演劇が好きな理由。私が誰かを好きになる理由。ハマっていく瞬間。思えば全部似ている。

演劇は、瞬間を永遠にすることができる唯一の表現媒体だと、そう思って、思い始めると止まらない。私はこれをずっと信じている。宗教を持たない私のよりどころになっている、なんて言ったら言い過ぎだっていう?

たとえば、君が君の手のひらの絹どうふに、吐く息と同じゆっくりさで、包丁の先を沈める。その横顔の真剣な様子の何秒かは、私に言わせてみれば永遠である。そういう主観すぎて説明のしようがない横顔の時間を愛している。

人も、ものも、言葉も、そういうのに惹かれる。そういうのっていうのは、その周りの時間がゆがんでしまうような性質のこと。空間丸ごと変えてしまうような、マイペースさを持つものがこの世にはある。正しい秒針のリズムで保たれた世界の秩序を、かき乱して笑わせてしまうような人に、私だってなってみたい。君の、出会ったいろんな人の、笑った顔が忘れられない。ありがと、勝手な笑顔。私を生かしてくれて、どうもありがとう。2018.10.07

 

p.s.

私を生かしてくれて、どうもありがとう、と、今さら思う。デスクトップが長いこと無地の水色なことに、そろそろ飽きてきたので変えようと思った。写真を漁っていたら、一枚の写真を発掘した。それは今年公演した劇の初日前の写真だった。六人がこっちを向いてわらって写っている。白い歯。白いシャツ。ダブルピース。人の配置がバランス良すぎて笑ってしまう。なんだこれ。ハハ……私こんなものもらえる資格なかったのに。その時カメラを構えてた自分を想像する。うん、やっぱ資格ねーぞ。なんだろうこれ。めっちゃ胸が痛い。なんでみんなあんなに優しかったんだろう。すごく優しかったことに、あの場は優しさで満ちていたことに、あの場は一瞬だったんだということに、今さら気づいてマジで死にたくなる。遅い。この写真を撮ってる私の耳に、「目の前の出来事に気づいて」と言ったって、私は絶対気づかなかっただろう、ひとりでずっと遠くを見ていた。彼女らに生かされていた。生かされていたことに、今気づく。大事にされていた。作品をこんなに大切に扱ってくれた。言葉の羅列を生き物にしてくれた。あの中で生きることができた。私、生きてる間は生きてることに気づけないのだろうか。遅い。遅すぎる。今は今しかない。あの舞台はもう二度とこない。何もかも永遠じゃない。45分は永遠じゃない。涼やかな音も永遠じゃない、目の動きも永遠じゃない、あそこでしか息ができない。舞台は生き物だ。生まれたら死ぬ。千秋楽のカーテンコールの拍手で死んでしまう。今は今しかない。ピント合わせてひたすらに誠実でいたい。2018.10.08

 

p.s.

誠実でいたい、の字間が不自然に広くてまぬけ。「誠実ではなく切実でありたい」といった人は誰だっけ。どこかで見かけたあの言葉が好きだ。2018.10.10