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あやちゃん

楽しい消費活動 / 置物、ポストカード

待っていた。やっと会えた。私はずっとこれが欲しかった。見たこともないのに、この光景に会いたくて仕方がなかった、気がする。

 

 

目当てのセレクトショップの斜向かいに、その古道具屋さんはあった。惹かれるものがあって吸い込まれるように扉を開けると、店内はほの暗くて、窓から差し込む光が空間に白線を引いていた。振り子時計の控えめなリズムの後ろに、bgmでヘニング・シュミートが小さくかかっていた。静か。大切にされてきた気配のあるものたち、よく磨かれた水色のタイプライターや古いけれど形の良い薬箪笥などが並んでいた。適切な手当を受けて洗われたものたちは、誰もくたびれておらず、けんかもせず、並んで次の主人をじっと待っていた。モノの墓場ではなく、ここはまるで世界の果てのバス停のようだと思った。

箪笥の上に、この陶器の人形がひとりで座っていた。私に背を向ける形で、抱いているのは何かと思ったら鹿の子どもだった。鹿は大人しく、抱かれるままに抱かれていた。女の人はもう大人の顔で、欠けた親指のある手で鹿を抱いていた。お互いに少しずつ体を寄せて、見つめ合ってはいないのに、混ざり合いそうなほど息を許しているように感じた。その光景はあまりにも美しくて、誰かを撫でるための手つきみたいに穏やかだった。抱きしめるもの、抱きしめられるもの。

 

 

これは目当てのセレクトショップで買ったカード。私は気づいたら鳥のモチーフばかり手に取っている。本物の鳥は特に好きでもないのに、鳥のブローチ、鳥の絵、鳥の壁掛け、そして鳥のポストカード。飛び立つもの。

 

抱きしめるもの、抱きしめられるもの、飛び立つもの。

そのまま私は知りたい。抱きしめる人、抱きしめられる人、飛び立つ人について。

 

私は今めちゃくちゃに悲しい。苦しい。泣くべき場所で泣かなかったから、夜行バスで血と言葉が溢れそうな口を抑えて眠りにつく。東京の家で布団を口に詰めて泣き叫ぶしかない。「泣くべき場所」を把握している時点で大人になったなと思う。車の窓から顔を出せば涙は秒で乾いていくが、枕の湿り気はいつまでもそのままだ。

抱きしめる人、抱きしめられる人、飛び立つ人、その誰もが違う人生を持っているということ。私の正しさは、あなたにとって正しくないこと。でもその差異は悪くないということ。例えば血が繋がっていようと、どこまでも他人だということ。それぞれに大事にしたいものも、何に幸せを感じるかも、どんな世界を見ているかも、違うけれど、それは悪くない。

「抱きしめるのが嫌になった」「抱きしめられるのが嫌になった」「飛び立つのが嫌になった」それもいい。悪くない。でも変わっていく個々だから、その関係性も変えていかなければ。第三者にも分かりやすい型通りの「関係」ではなく、当事者でしか共有できないような、曖昧な「関係性」の構築を。その曖昧さを恐れた先に待っているのは、きっと差異の死だ。もしくはさようならだ。

実態のない「関係」にしがみつくのは心を減らすだけだ。原点に立ち返った時、見つめないといけないのはいつだって実態のあるものではなかったか。今ここの、ここにいる、存在を見てくれたらいいのに。私もあなたも、切れば血が流れる腕がある、痛みを感じれば萎縮する体がある。生まれた後に後付けされた様々な情報、年齢だとか、役職だとか、性別だとか、年収だとか、地位だとか、(今なんて勝ち負けとかもはやその場の雰囲気で決まるものなのに、何を「勝ち」と信じ一体誰に自分の「勝ち」を披露しているのか、誰が圧倒的で明瞭な「勝ち」だというのか。)ああもううるさい。うるさいな。うるさい。

抱きしめる人、抱きしめられる人、飛び立つ人。結び合ったリボンは風化した、だから新しいリボンを掛け直そうか。そのリボンを何色にするか、生地はどうするか、たったそれだけのことなのに。

いつになってもあなたはあなたでいいのだ。生きてる限り、生きているのが不思議。関係は切れても関係性は終わらない、果てしないだろう。果てしないな。そして結んだリボンは、誰かとの一本ではなくて、想像以上にたくさんの他者と結んでいるものだ。あなたが気づかない縁の向こうで、あなたを思う人間がいるものだ。例えば私のようにだ。

他人も自分も大事にしたい。もっと言えば人が大事にしてるものを大事にしたい、し、私の大事なものを大事にされたい。話しても話しても大事にしてくれないのなら、力を込めて蹴るし、そういうものだと思っている。

抱きしめる人、抱きしめられる人、飛び立つ人。みんなの幸せを願っている。

 

 

(ショップ情報 /置物は green furniture、ポストカードはthe stablesというお店。どちらも青森県弘前市にあります。)

 

 

uo  2019 08 19