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ぱー
waimai
RisuPon
ぽ
メイ
あやちゃん

まだ少し起きていたいから

お風呂上がり、布団に潜る。雨の音が聴こえて、窓を開けてみる。
冷たい風が通り抜ける。濡れた髪が冷えて気持ちいい。雨が静かに降り続く。その音があまりに心地よくて、思わず雨音を録ってみたけれど、録音だと音質が落ちてしまって今耳で聞いてる音を残すことはやっぱりできない。しかたないからこのまま窓を開けて、しばらくじっくり耳に焼き付けながら、眠りにつこう。
こんなに静かにたくさん降る夜の雨、久しぶりなきがする。
いい夜だ。いい夜だなぁ。やっぱりまだ少し起きていたいから、先日の旅の記録を書こうと思う。

 

春先の電車の中で、最近はもうすっかり暖かくなって、大好きな冬があっという間に過ぎてしまったのを寂しく思っていたら、隣に座ったおじいちゃんがストーブの香りがして、冬の匂いを残して届けてくれて、嬉しくって残さず吸った。

夜行バスの時計が闇に光だけ浮き上がってるみたいで好き。
夜行バスの薄いカーテンから漏れる光が星空みたいできれい。

先日、山形へひとり旅をした。

まず先に湯野浜海岸に行ったのだけどシーズンじゃないからか砂浜はゴミだらけで、そこをひとりのお兄さんが箒を持って掃除をしていた。とっても広い砂浜に、たった一人で。
砂は細かくサラサラで、風の模様に波打っていた。
それから湯野浜温泉を探して30分くらい歩いたけど見つからない。調べてみたら、どうやら湯野浜温泉っていう温泉があるわけじゃなくて、この辺りに沸く温泉全部が湯野浜温泉らしい。だからつまりここら辺の宿についてる温泉が湯野浜温泉だってことに気づき、日帰り温泉できる宿探して、次のバスが来る40分間の間に急いで入った。

お風呂上がりに外を歩くのは本当に気持ちよくって、走ってバス停まで行って、目的だった水族館に向かった。
重たい荷物をロッカーに預けて身軽になったらまたさらに気分がよくなり、とてもお腹がすいてたから中のレストランでお昼ご飯を食べようと券売機を見たら大好きなふぐ刺しの定食があって、まさか水族館でふぐ刺しが食べれるなんて思わなかったからまたすごくテンションが上がった。定食のお盆の上には刺身の他にも何個か小皿が置いてあって、それぞれにおかずが入っていてどれも本当に美味しくって全部ちょっとずつちょっとずつ平等に食べた。
この美味しさと幸せを誰かと共有できないのは少し寂しいなと思った。

水族館の中は平日だったのでとても空いてたから大きい水槽にへばりついて独り占めすることができた。
中でも気に入ったのはイカで、三角の部分をゆらゆらさせて泳ぐ姿と、半透明の中にうっすらみえる内臓がとっても綺麗でしばらくイカの水槽の前に居座った。もともと目的だったクラゲもじっくりと眺め、クラゲの餌やりまで見させてもらった。クラゲはクラゲを食べるらしい。

その日の晩はゲストハウスに泊まった。家に着くと既にその日宿泊する人たちで集まってみんなで夜ご飯を食べていた。台湾で映画を製作してる女の子4人組と、八王子からきた女の子、あと生活の達人と名乗るこのゲストハウス常連のおじさん、穏やかそうなゲストハウスのご主人とねこのなっちゃん。
台湾の言葉と英語と日本語が飛び交う食卓。次々と手作りの料理が運び込まれてきて生活の達人お手製の濁酒をのみながらたくさんおしゃべりをした。部屋のベッドもふかふかでこの日は眠ってしまうのが惜しいほど幸せな夜だった。
次の日早起きをして、電車乗り継いでひらめちゃんの待つ青森へ向かった。
青森県の三沢駅の改札を出た瞬間3年ぶりの再会みたいに飛びついて出迎えてくれた。

タクシーに乗って寺山修司記念館に向う。山をぐんぐん登った先に、全くその場に馴染んでない建物が建っていた。中は本だらけで、展示はしっかりと見応えがあって三時間ほど居座っていた。建物の外の林を抜けると湖があって、半分凍っていて凍ってない方では鴨が泳いでいた。ここでスケートできるねってひらめちゃんは言った。あとで聞いた話だと、中学校の体育の授業で青森はスケートを習うらしい。きっとめちゃくちゃ上手なんだろうな。私はボートに乗りながらスイスイ滑るひらめちゃんを見ていたいかな。


寺山修司記念館にいった帰り、優しい従業員の人が帰り駅まで送ってくれることになって、その車を手配してもらう間にサンキューカードという3月9日に届くお手紙を書いた。きちんと届いたんだろうか。久しぶりにクレヨン握った。
次の目的地に行く前に、もうすぐ無くなってしまう駅の中にある蕎麦屋さんでうどんを食べた。その駅の中は昔の時間がしっかりそのまま残っていて流れていた。駅の待合室は高校のカフェテリアのようで、ガムの自販機や瓶ビールの箱が積み重なったりしていて、どこまでもさっきのお蕎麦屋さんのだしの香りが続いていた。帰りのバスは夕暮れで、外の景色もバスの中も全部オレンジ色に染まっていてとても綺麗だった。

その日の晩はひらめちゃんのお家に泊まった。大きくて白くて清潔なお家にたくさんの愛が詰め込まれていた。お父さんもお母さんも妹も弟もとってもチャーミングでまたここでもたくさんの手料理と美味しいシードルをいただいて幸せいっぱいの夜ご飯だった。その日の晩は修学旅行の夜みたいに少し興奮して布団に潜って、目をつむりながら昔の話や将来住みたいところの話、好きな人の話をしたりして眠った。

次の日は朝はやくからお父さんが酸ヶ湯温泉まで車で送ってくれて一番最初、二人きりで千人風呂に浸かった。お湯は名前の通り酸っぱくて、お肌はツルツルになった。ひらめちゃんが、きっと酸が皮膚を溶かしてすべすべになったんだよ、なんてちょっと怖いことを言っていた。休憩所で二時間ぐっすり寝て、お昼にはのっけ丼に連れて行ってくれて新鮮なお魚をたんと食べた。少し湯疲れしていた体はすっかり元気になって、青森駅を散歩して、たくさんのお土産を買って帰った。これまで出かけてもあまりお土産を買うタイプじゃなかったのだけれど、ものは時間を記憶して残しておけることを大学に入ってからすごく実感するようになって、きちんとこの旅の時間を残しておいておけるように、今回はたくさんお土産を買った。この旅の途中、これこの人にあげたいと顔が浮かぶことが度々あった。

電車に乗って海を眺め、駅に着いたら足湯に浸かって、あっという間に帰る時間になっていた。最後もう一度ひらめちゃんのお家に戻った時食べたリンゴがあんまりにも美味しくって駅まで送ってもらう途中にスーパーに寄ってリンゴを買って帰った。

長い時間夜行バスに乗って、くたくたの体で遅延している中央線に乗り、久しぶりの我が家に帰った途端に現実に引き戻された気がしてさみしかったけれど、旅行期間中に着ていた服を洗濯機に入れようとリュックを開けた瞬間、中から甘いリンゴの香りが広がった。

 

2019/3/11 AM2:05 あやちゃん