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ぽ
メイ
あやちゃん

悲しみを和らげて

あるはずだった時間がポッカリ消えていく。
それまで積み重ねて来た時間が、気持ちが、「中止」の一言で一瞬で消え去ってしまう。

舞台も、ライブも、イベントも、展示も。

長い期間準備を重ね、お金をかけて、多くの人が今のすべてを注いで、何ヶ月、人によっては何年もの思いが完成する時が、来るはずだったのに。全てが夢だったかのようにあっさりと消えていく。

ある学校では卒業制作展がなくなった。

自分のこれまでの全ての時間を形にし、それをたくさんの人に観てもらえる大きな機会が一瞬にしてなくなってしまったなんて、その人たちのことを思うと苦しくて耐えきれない。

 

私の学校も卒業式が中止になった。

そんなにめちゃくちゃ楽しみにしていたつもりはなかったのだけど、

思えば入学式、あの壮大な堀尾先生の演出で迎えられて、本当に感動して、母と卒業式も楽しみだねなんて会話をした気がする。

9歳のころから武蔵美に月に一度遊びに行っていて、小学校の卒業文集にも美大に入りたいと書いた。たくさんの大好きな人が武蔵美で学び、卒業して活躍している姿を側で観てきて、私もそのあとを追うように、美大に入り、そして卒業できることが嬉しく思っていた。当たり前のように卒業式の日を迎え、先輩たちにその報告ができると思っていた。

ずっとお世話になったドリヤン洋菓子店も卒業して、3歳から住んで来た街からも引っ越して、これまでの一区切りとなる卒業式になるつもりだった。

賞をとって、小竹先生から彩音に学科を代表して賞状を受け取ってもらうことにしたよと連絡をもらった時は本当に嬉しかったし、何度かその瞬間を想像して目を瞑った。

小竹先生の最後の卒業式、しっかり思い出に残るように、誇りになるように、また自分の勇気にもなるように、これから大海にでていくから、立派な船を作ってそれに乗って壇上に立とうと計画していた。

客席から空デの先生たちが集まって座っている姿を観たかった。

みんなの個性豊かで最高に素敵な姿を観たかった。

4年間、一緒に入学して同じ場所で同じ時間どこかで制作してきた人たちを知りたかった。その人たちと一緒に最後の瞬間を共有したかった。

 

一緒に制作してきた仲間ときちんとさようならを言えず自然解散になってしまうのは本当に辛く悲しい。

 

自分が気づいていなかったほど、長い時間積み上がって来た気持ちがあって、期待があって、中止と知った時、思ってもいなかったほど悲しみと悔しさがこみ上げてきて、未だにその気持ちは絶えず湧き続けている。考えれば考えるほど「なんでよりによって今なんだ」という気持ちになってしまった。

たかが卒業式だけど、一生に一度の、人生最後の卒業式だったから。

 

 

 

 

卒業式が中止になったのは、3.11の震災以来だという。

ほんの数週間前まではそんな大ごとだとは思っていなかったけれど、それだけのことが今日本で起きているのだと実感した。

でも自分が実際に卒業式がなくなるという体験をしたからこそより今起きていることの異常さと深刻さを実感できたのかもしれない。もしこうなっていなかったらここまで大きな問題が起きているとは気づいていなかったかもしれない。

ホテルや飲食業界の売り上げは最悪、経営を続けられなくなってしまったお店も続々と出て来ていて、一人の人の人生が大きく変わってしまうほどまでの影響が及んでいる。

国が混乱して、その先どんなことが起きてしまうかの想定ができてない目先の判断ばかり下されていて、視野の中にいない人たちがその判断から生まれた波紋に頭を抱えている。

感染はどんどん広がり、人が亡くなり続けていて、その度にテレビで一人また一人と報道され不安は募っていく一方。

この先どうなってしまうのかわからない不安と、たくさんの人の悲しみと悔しい気持ちばかりが世の中に充満している。

そもそも国がもっと前からきちんと対策をとっていれば、今回の問題についていろんな可能性を危惧し真剣に向き合っていればここまでのことにはならなかったのでは?という避けられない運命ではなかったような気もしてそれが尚更悔しい気持ちを掻き立てる。人間ではどうすることもできない天災ならまだ諦めがつくものの、今回は次々にもっとあの時こうしていれば、ということばかりが出て来ていて、それも悲しみが収まらない理由だろう。

 

 

 

 

 

 

お願いだから、これ以上感染も混乱も悲しみも広まらず、早く終わりの兆しが見えますように。

 

今回のことで沸き起こった感情とこれまで費やしてきた時間がいつか活きるときがきますように。

 

生まれてしまったたくさんの悲しみが、時間をかけてでも奥底から癒えますように。

これまでなくなってしまったものたちが無駄にならぬように、とにかく私たちにできるのはしっかり予防と対策をし、これ以上悲しみが広がらないようにと祈り思い馳せ、今より困難な立場にいるお医者さん看護師さんや先生やお母さんたち等の声に耳を傾け起きていることを知り、考え、発信すること。

そして今マスクをしていない人に嫌味のようにしていないことを指摘したり、ヨーロッパに旅行に行っている友人は通りすがりに「コロナ」と言われたり咳をする真似をされたりしているみたいで、こんな悲しみばかりの日々の中でさらに人の心を冷たくする人がいるのかと話を聞いて悲しくなってしまったけれど

こんな時だからこそ、少しでも悲しみが和らぐように優しく温かく人と接していきたい。

 

 

バイト先の桜が一足先に満開になった。もう春が来る。温かくなって空気にお花の香りが混じるようになったら、少しは穏やかになれるかな。

2020/2/28 あやちゃん