画像の説明
ぱー
waimai
RisuPon
ぽ
メイ
あやちゃん

綺麗を綺麗と思えること

 

先日、出演予定だった舞台が中止になって、そのことを一緒に住んでいる友人に報告したら「寿司食べよう」と誘われて、ちょっといいお寿司屋さん(と思って入ったらお刺身屋さんだった)に行った。

刺身の盛り合わせと、海老の唐揚げとあん肝ポン酢、ちょっと高いけど今日はいいよねって行ってハマグリの酒蒸しも頼んで、8種類くらい種類がある中でもちょっといい日本酒も頼んだ。

口にするもの全てが美味しくて、1つ1つにしっかり感動しながら黙々と食べた。ウニは本当に涙が出そうになる程美味しかったし、途中から今これは夢なのかもしれないと思うほどに幸せだった。

やっぱり美味しい食べ物は人の心を救う。すっかり元気になって、これまでで一番酔っ払って、ベットに着くまでずっと気持ちがよかった。私が眠りについた頃、一緒に住んでいる友人は、次の日早く出かけなければいけない私のためにおにぎりを握ってくれていた。

 

 

その日はもう3月も終わるというのに雪が降って、満開の桜に白が積もった。

同じマンションに住んでいた幼馴染から、今庭の桜と雪がとっても綺麗だから見てとラインが来ていた。今もう引っ越してしまって見れないと伝えたら、桜をかぶった小さな雪だるまの写真を送ってくれた。

 

 

美味しいと綺麗を共有してくれる人がそばにいることを心から幸せだと思った。美味しいと綺麗を共有したい人が近くにいるってこともすごく幸せなことなんだと思って、大好きな人たちに会いたくなった。

 

次の日、最後のケーキ屋さんのバイトの前にマンションに帰った。雪はもう溶けてしまっていたけれど、桜は本当に綺麗だった。

最近綺麗な桜を見るほど心が重たくなって、不安な気持ちがこのままいつまでも続く気しかしなくて、何もなくても泣きたくなるような夜が続いていたから、綺麗を綺麗と純粋に思えたことを嬉しく思った。

 

この場所で何度も何度も書いてきたけれど、ドリヤン洋菓子店でのアルバイトの時間が本当に好きだった。

朝、ブラインドを上げて店に日の光が差し込みお店の温度が少し上がる。瞬喫茶室の灯りをつけ音楽をかけると喫茶店の時間が動きだす。

花に水をあげて、窓をふき、コーヒー豆を補充するとコーヒーの香りがぶわっとキッチンに広がる。時々車が太陽を反射して真昼の流れ星のように光が走り去る。

入り口にはパートの方が大切に育てている季節の花が咲いていて、昨日は真っ赤なアマリリスが4つ綺麗に咲いていた。

決まった時間に常連さんが来て、マスターとこの街の話をする。日曜日の日中は家族連れがケーキを買いに来て、小さな子は好きなケーキを教えてくれる。流れる音楽に合わせて口笛を吹くおじさん、いっつもおしゃれでタバコを一本だけ吸って帰るかっこいいおばあちゃん、いつもウィンナーコーヒーを頼むけどウィンナーコーヒーの名前を忘れてしまうおじいちゃん(でもたまにココアを頼むから毎回ちゃんとオーダーは聞かないといけない)、お散歩の途中にコーヒーを一杯だけ飲んでいく老夫婦、シュークリームが大好きなおじいちゃん

ここでの時間だけはどこまでも続くような気がした。ここで流れる時間にいつまでも居たかった。でもどこまでも続かないことを知っているし、いつまでもここに居るわけにはいかない。

ずっと忘れたくない大切な時間。ずっとここで感じていた温かさと優しさと穏やかさを保ち続けよう。もしも思い出せなくなったら帰ってこよう。また遊びに来るからねと伝えて店を出た。

 

4月から、新しい生活が始まる。

慣れない毎日は不安だけれど決めた以上は戦い続けなきゃいけない。

これから広がる新しい出会いに期待をして、私は作品を作り続ける。

 

2020.3.31  あやちゃん