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ぱー
waimai
RisuPon
ぽ
メイ
あやちゃん

寂しくないようにね

バイト先のケーキ屋に、見慣れない老夫婦がきた。
はじめにケーキセットを頼んで、レアチーズとモンブランを食べて、それからさらに追加でかぼちゃのプリンとガトーショコラを頼んで、どれもお互い半分ずつ分け合って食べていた。

その様子を微笑ましくみていると、マスターがいなくなった隙におばあちゃんがわたしに小さく手招きをする。そしてわたしの耳元でこそっと、「これ、ここに飾っておいてくださる?」とキーホルダーの紐から外した小さなジバニャンのマスコットを手渡された。
おばあちゃんの座った席の横には今年の干支の犬の置物があって、その横にジバニャンを置いておいてほしい、とのことだった。
「寂しくないようにね」と犬を撫でながらおばあちゃんはいった。その様子を正面に座るおじいちゃんは優しい目で見つめていた。

他にも色々あるのよ、といってお財布についているたくさんのキーホルダーを見せてくれた。
「妻はこういうのを集めるのが好きでね」
その言葉からおじいちゃんはおばあちゃんのことが好きで好きでたまらないのをひしひしと感じた。

マスターが裏から戻ってくると、また私の耳元に手を当て、こそっと「こんなことしたら、マスターに怒られちゃうかしら」といたずらっ子みたいに言ってきた。
「きっと大丈夫です、マスターもそういうの好きなので。ちゃんとわんちゃんが寂しくないようにそばに置かせていただきます。」と答えると
おばあちゃんはにこっと笑って、「ちゃんと、倒れないようにね。あと他の人に取られないように、ちゃんと側に置いておいてね」と何度もわたしに伝えた。

おじいちゃんがお会計をしている間、おばあちゃんは昔このケーキ屋さんによく通っていた話をしてくれた。
お互い体調を崩してしまってなかなかここまで来られなくなってしまっていたのだが、やっと良くなって、おばあちゃんがここに食べにいきたいと言って来てくださったらしい。
さっきケーキを2個も食べたのに、おばあちゃんはまだ目をキラキラさせながらショーケースをみつめ「ここにあるケーキ全部食べたいわ」なんていって、おじいちゃんは「また食べにこよう」と答える。
店に置いてあるもの全てにかわいいと時めき、とてもおしゃべりで色んな話を思い出してはぽんぽん話してくれる。そんな少女のようなおばあちゃんを、おじいちゃんは愛おしそうにみつめる。

胸が苦しくなるほど愛を感じた。

また食べに来ます、と伝え、おじいちゃんはおばあちゃんの手を取りゆっくりとお店を出ていった。

わたしは約束通り、犬の置物の隣にジバニャンを置く。
またおばあちゃんが食べにきた時に、2匹を見て嬉しそうにするおばあちゃんのことを想像しながら。

2018/9/22 あやちゃん